楽天のRSL(楽天ロジスティクス)を利用すれば、楽天出店における出荷業務を大幅に効率化できます。
楽天市場でのショップ運営は、ページ作りから出荷作業、顧客対応まで自社での対応が必要であり、企業規模によっては出荷業務に追われて、ショップ運営の要となる部分が疎かになってしまうこともあるでしょう。
楽天市場のショップサイト運営で、社内のリソース不足が深刻になる前に検討したいのがRSLです。
このページでは楽天市場のRSLについて、どのような作業を任せられるのか、利用条件や料金等をまとめて解説します。
楽天市場出店における手間を効率化し、最も重要な業務に専念するための1つの選択しとして、チェックしてください。
RSLとは?代行業務の内容は?
RSLの正式名称は、「楽天ロジスティクス」。楽天市場が提供する出荷業務代行サービスのことです。
RSLを利用すれば、楽天市場が出店者に代わって、ユーザーに商品をスピーディーかつ安全に届けてくれます。
具体的にどのような業務を代行してもらえるのか、詳しく見ていきましょう。
RSLで対応してもらえる作業内容
RSLは、主に以下の業務に対応しています。
- 入荷作業
- 保管業務
- ピッキング・梱包・配送
- 不着返品受入
オプション追加で以下のサービスも利用可能です。
- 商品期限管理
- ギフトラッピング
- チラシ、販促物封入
- コンテナ入荷
さらに「RSLカルテ」として、物流課題を特定・改善に生かせるように以下4つの機能も用意されています。
- 物流コストの推移
- 入荷数・出荷数・保管数の基本情報
- 長期保管傾向
- 売れ筋商品の欠品日数
RSLには、出荷業務だけでなく、販促活動や分析に役立つ要素も備わっています。
RSLの利用条件
楽天市場RSLの利用条件は、以下のとおり。
- 楽天市場への出店
- 受注管理システムの導入
楽天市場に出店していなければRSLを利用できません。また、RSLの利用で入荷予定データや出荷依頼データを送信するために、受注管理システムの導入・連携が必要です。
受注管理システムは楽天の店舗運営システム「RMS」とは別に必要で、楽天市場が代表例として挙げているのは、以下のシステムです。
- BOSS
- ネクストエンジン
- クロスモール
- 助ネコ
- 通販する蔵
例えば「BOSS」には無料プランの「RSLプラン」のほか、有料プランとして楽天市場の受注処理を自動化する「RMS自動化プラン」と、楽天市場以外のモールにも対応する「スタンダードプラン」があります。
RSLを利用するメリット
RSLを利用して出荷にかかる各種業務を楽天市場に任せることで得られるのは、以下9つのメリットです。
- 出荷業務の負担をまとめて軽減
- 送料が安い
- あす楽対応
- 365日年中無休
- セール時も安心対応
- 楽天市場以外からの注文にも対応可能
- 梱包・配送のクオリティ向上
- チラシや販促物の同梱対応
- 専任担当によるサポート
それぞれ解説します。
出荷業務の負担をまとめて軽減
自社で注文商品の発送を行う場合には、注文発生の都度、スタッフが出荷業務を担当しなければなりません。
注文数が少ないうちは簡単作業で処理できますが、注文数が増えてくれば作業も煩雑になり、出荷作業に追われることとなります。限られた人員で出荷業務の負担が増大すれば、肝心のショップ運用が疎かになる可能性がありますし、発注ミスや誤発送の原因にもなりかねません。人を増やせば、それだけ人件費の負担も増えます。
RSLに出荷業務を任せられれば、出店者がやるべきことは、楽天市場の倉庫に商品を保管しておくことと、注文が入ったときに発送指示を出すだけ。後はRSLが対応してくれますので、スタッフは収益をアップするための業務に注力できます。
送料が安い
RSLの利用では、通常料金に比べてかなり安く配送サービスを利用できます。自社で対応するより節約できる可能性もあり、自社で人材を抱えるより効率的です。
RSLの各種料金について詳しくは後述しますが、いますぐチェックしたい方は以下リンクからジャンプできます。
→ RSLの料金
RSLなら楽天市場に業務を任せつつ、安い送料で発送可能。作業もコストも省けるのは嬉しいメリットですね。
あす楽対応でスピード感アップ
ネットショッピングにおいては、手元に商品が届くまでの時間も、ユーザーに選ばれるための重要な要素の1つ。
RSLでは、楽天市場で翌日のお届けを保証するサービス「あす楽」にも対応しています。
あす楽で配送遅延があった場合は、楽天あんしんショッピングサービスによる補償もあり、顧客満足度向上にも貢献してくれるでしょう。
365日年中無休
自社のみの運用では店休日もあり、365日体制での配送対応は難しいですが、RSLを利用すれば年中無休で随時対応してもらえます。
自社が長期休暇中でも商品を倉庫に納品しておけば、発注オーダーを出すだけで、後はRSLが対応してくれるので安心です。受注処理を自動化しておけば、社員が休んでいても滞りなく商品を販売できます。
セール時も安心対応
楽天市場では年中様々なイベントやセール、キャンペーンが行われており、注文が集中することもあります。
自社で発送する場合は発送遅延とならないように事前に人員を確保するなど、対策が必要となることもあるでしょう。
RSLを利用していれば注文が殺到しても全面的にお任せできるので、自社で特別な手配をする必要もありません。
楽天市場以外からの注文にも対応可能
RSLでは倉庫に商品を保管していますが、楽天市場以外のECモールから入った注文に対して、それらの商品を発送することもできます。
例えばRSL利用で、楽天市場以外にAmazonでも自己発送で出品しているとすれば、Amazonで商品が売れた時、RSLにAmazonユーザーへの配送も代行してもらえるわけです。
RSLから他モールの注文を代行発送する場合の発送については、楽天のロゴ入りダンボールではなく、無地ダンボールで梱包して発送してくれます。
しかも、送料は楽天市場の注文に対して発送するケースと全く同じ料金でお得です。
梱包・配送のクオリティ向上
RSLでは、徹底管理された倉庫でピッキング、梱包、配送が行われています。緩衝材やシュリンク等も使用して丁寧に梱包してくれるので、ユーザーが受け取ったときの印象も良いはず。
届いたときの印象が悪いと商品自体の価値も下げてしまう可能性があるので、梱包や配送のクオリティは非常に重要です。
チラシや販促物の同梱対応
RSLを利用した場合でも、ダンボール箱にチラシや販促物の同梱に対応してもらえます。
発送する全ての商品に入れることも、条件指定して一部のユーザー向けに入れることも可能です。
こうしたひと手間に対応してもらえるのも嬉しいですね。
専任担当によるサポート
RSL利用の際は、楽天市場の専任担当によるサポートも受けられます。
サービスを最大限に活用して効率化を図るためにも、サポートがあると安心です。
楽天市場への出店では、ショップづくりから日々のイベント等への対策、集客施策など、やるべきことがたくさんあります。社内のみで対応が難しいとき、人員を増やす必要があると感じたときには、まずRSLを検討してみるといいでしょう。
ECサイト運営で困ったときには、ECサイト運営代行会社に業務を委託する方法もあります。社内のみでは対応できる範囲が限られますが、代行サービスを上手に利用できればEC事業拡大にも役立ちます。
ECサイト運営代行会社では、プロによる集客・販促ノウハウも活用できます。お気軽にご相談ください。
RSLを利用するデメリット
RSLの利用にはたくさんのメリットがありますが、以下のようなデメリットもあります。
- コストがかかる
- 保管手数料が高め
- 導入に時間がかかる
それぞれ見ていきましょう。
コストがかかる
作業を外部委託するには、当然費用がかかります。
在庫保管料や出荷作業料の負担が発生するので、その分も収益が確保できないと厳しいでしょう。
導入に時間がかかる
RSLは、申し込んですぐに利用できるものではありません。申し込みから利用開始まで、早くても2ヶ月前後はかかります。
RSLを導入したい場合は、早めに申請しておきましょう。
保管手数料が高め
RSLでの保管手数料は、ほかのサービスと比較して高め。
RSL利用では必須の手数料だけに、コストが高いのはデメリットです。
RSLの料金
RSLの利用で発生する料金は、以下の3つです。
- 在庫保管料
- 出荷作業料(梱包費含む)
- 配送費
各料金について解説します。
在庫保管料
RSLでは、商品ピース(PCS)ごとに在庫保管料が発生します。
RSLの在庫保管料は1,000㎥あたり7.5円/月/PCSをベースに、「商品体積」「保管期間」「保管数量」の3つの要素で決まる仕組みです。
出荷作業料
出荷作業料は、商品ピース(PCS)ごとに発生する、注文商品の出荷にかかる手数料。
出荷作業料は商品サイズに応じて、以下のとおり決められています。この料金には、梱包費も含まれています。
商品サイズ | 商品ピース(PCS)あたりの出荷作業料 |
---|---|
極小サイズ | 50円 |
小サイズ | 80円 |
中サイズ | 100円 |
大サイズ | 200円 |
このうち「小サイズ」のみ、2PCS目以降は65円/PCSにディスカウントされます。
配送費
RSLでの商品1個あたりの配送費は、梱包資材費を含めて以下のとおり。沖縄、北海道、離島も含め、全国一律料金で配送できます。
商品サイズ等 | 出荷数1個あたりの配送料金 |
---|---|
ポスト投函 | 180円 |
60~100サイズ | 380円 |
120サイズ | 500円 |
140~160サイズ | 850円 |
日本郵便との提携料金なので、通常よりかなり安くなっていることがメリットです。
RSL導入までの流れと時間
楽天市場出店でRSLを導入する際の流れは、以下のとおり。
- 楽天市場に見積もり依頼
- 担当者から物流状況についてのヒアリング
- 1~2週間で担当者より見積もり提示
- 担当者から必要経費や利用条件、注意事項等の確認
- 利用申込書提出・契約成立
- RSL導入準備
- 稼働開始
契約後の導入準備はテスト実施等を含め、かかる期間は「1ヶ月~」とされていますので、稼働開始までは早くても2ヶ月前後かかります。
RSLの申し込み方法
RSLの申し込みは、まずRMSの店舗運営Naviの「[楽天スーパーロジスティクス(RSL)]お申し込み方法とお問い合わせ先」ページ内にある[楽天スーパーロジスティクス見積もり依頼フォーム]から手続します。
見積もり依頼フォームのボタンをクリックすると、以下のとおりRSL見積もりに必要な質問事項が表示されるので、各種情報を入力して見積もり依頼をします。
質問事項の内容は、以下のとおりです。
- ECサイト運営と物流対応状況
- RSLに委託検討している物量、商品情報
- 委託予定の商品の画像・バーコードについて
- RSLで扱えない要件について
分からない部分は後日担当者からのヒアリングもあるので、目安で入れておけば問題ありません。
これらの情報と担当者からのヒアリング内容を踏まえて、数週間で見積もりが提示されます。
RSL利用での商品お届けまでの流れ
RSLを利用した場合の倉庫への納品から商品が顧客に配送されるまでの流れは、以下のとおりです。
- ショップから楽天市場へ入荷予定データの送信・納品発送
- 楽天市場倉庫にて荷受け
- 入荷予定データと現物の照合
- 検品作業で商品数や件数、著しい破損がないかチェック
- 楽天市場の倉庫にて棚入れ保管
- ショップに注文が入る
- ショップが楽天市場に出荷依頼データ送信
- 楽天市場倉庫にてピッキング・梱包・出荷
ショップが対応を行うのは、RSL納品前の「入荷予定データ」の送信と納品発送、注文が入った後の「出荷依頼データ送信」のみ。後は楽天市場のRSL担当が処理してくれます。
RSLを利用する前に知っておきたい注意点
RSLの利用前に把握しておくべき注意点も見ておきましょう。
- RSLを利用できない商品
- RSLで対応できないサービス
- 納品時のバーコード表示
それぞれ解説します。
RSLを利用できない商品
RSLでは、以下に該当する商品は納品できません。
- 3辺合計が160cm以上・25kg以上
- 販売価格30万円超の高額商品
- 生体(生もの・常温保管できないもの)
- 危険物・毒物・劇物(花火・薬品等)
- 第1類・第2類・第3類の医薬品
- 高度医療機器・管理医療機器
- 梱包なしの商品・梱包できない商品
- 利用運送約款及び配送業者の約款上取り扱い不可の商品
サイズが規定以上だったり、梱包できないような長尺の変わった形の商品は、RSLでは取り扱ってもらえません。
RSLで対応できないサービス
RSLでは、以下のサービスには対応していません。
- カスタマーサポート
- 後払い振込用紙の同梱
- 領収書を含む信書の同梱
- 撮影・採寸・原稿作成対応
- 店舗支給資材を使用した発送
- 店舗が指定する梱包資材による梱包
- 製品表示・品質表示ラベルの貼付作業
- 納品時組み立て・設置が必要となる商品の配送
- 頒布会や定期購入商品の出荷
- 自社オリジナルの納品書や送り状の封入
RSLは顧客へのサポートに対応していませんので、顧客対応は自社で行う必要があります。
納品書のカスタマイズは可能ですが、オリジナルの梱包材や梱包資材の使用依頼には対応していません。
納品時のバーコード表示
RSLで倉庫に預ける商品には、バーコード表示が必須です。AmazonのASINコードでも可能ですが、バーコードがなければ納品できません。
バーコードがない商品については、ツールを使用して作成する必要があります。RSL担当者に相談すれば無料ツールを紹介してもらえますので、相談するといいでしょう。
RSLとAmazonFBAの違い
楽天市場に出荷業務をアウトソーシングする「楽天ロジスティクス(RSL)」と、Amazonが出品代行する「AmazonFBA(フルフィルメント by Amazon」はよく似ており、どちらを利用するか迷われることもあるでしょう。
RSLとAmazonFBAでどのような違いがあるのか、サービス情報を一覧で比較してみました。
項目 | 楽天市場RSL | AmazonFBA |
---|---|---|
対応業務 | ・入荷作業 ・保管業務 ・ピッキング・梱包・発送 ・不着返品受入 | ・受注対応 ・入荷作業 ・保管業務 ・ピッキング・梱包・発送 ・カスタマーサービス ・返品対応 |
365日対応 | ◯ | ◯ |
提携配送業者 | 日本郵便 | 複数配送業者 |
時間指定 | ◯ | ◯ |
受注管理システム | 導入必須 (BOSS、ネクストエンジン、クロスモール、助ネコ、通販する蔵) | 不要 (Amazonセラーセントラルで対応可能) |
通常配送 | 当日もしくは翌日中に出荷 | 出荷日の約束なし |
スピード配送 | あす楽 (当日15:30までの出荷指示で翌日中にお届け) | お急ぎ便 (当日7:30までの出荷依頼分→当日出荷当日お届け) (14:00までの出荷依頼分→当日出荷翌日お届け) |
当日配送 | ✕ | 一部エリアで対応あり |
他モール出荷 | ◯ | ◯ |
他モール出荷でのロゴなし資材対応 | 標準対応 | ・申請必須 ・非対応FC(フルフィルメントセンター)あり |
他モール出荷時の料金 | 通常料金と同一 | FBAとマルチチャネルサービスでそれぞれ料金設定が異なる (FBAの通常料金より高額) |
顧客対応 | 自社 | Amazon |
ギフト対応 | ◯ | ◯ |
チラシ・販促物封入対応 | ◯ | ✕ |
在庫保管料 | 7.5円/1000㎥ | 3.10円~9.17円/1000㎥ |
納品書カスタマイズ | ◯ | ◯ |
海外発送 | ◯ 追加料金あり・別途契約必須 | ◯ 追加料金なし |
専任担当によるサポート | ◯ | ✕ |
大量納品対応 | コンテナ入荷 | パレット納品 |
直接納品 | AmazonFBAへの納品対応あり | 楽天市場への直送対応不可 |
RSLでは、日本郵便との提携で安定した配送で荷物を届けてくれます。Amazonはヤマト運輸や日本郵便、佐川急便のほか小規模運営の宅配業者とも提携しており、配送のクオリティに差異があるのがRSLと比較したときに気になる点でしょう。
Amazonの配送会社については、以下の記事で紹介しています。
RSLでもFBAでも、楽天市場以外のECモールで販売した商品発送に対応しています。RSLでは無地ダンボールでの対応が標準かつ追加料金も不要ですが、FBAでは他モールへの発送は料金が通常より高く設定されているほか、無地ダンボールにしてもらうには申請が必要で、無地ダンボールでの発送に対応している倉庫も限られています。
AmazonFBAの手数料については以下の記事で詳しく解説していますので、こちらでチェックしてください。
ここまでの比較情報をまとめると、RSLはFBAと比較して以下の点で優れています。
- 柔軟性がある
- 配送料が安い
- 配送に安心感がある
- 他モールに対応しやすい
一方、FBAはRSLと比較して、以下の点が優れていると言えるでしょう。
- 受注業務や顧客対応業務もまとめて委託できる
- 在庫保管料が安い
- 業務対応範囲が広い
- 一部地域ながら当日配送にも対応している
いずれもメリット・デメリットがありますが、RSLもFBAもECサイト運営を大幅に効率化してくれる便利なサービスです。
自社に合ったサービスを選択して、EC事業拡大に役立てたいですね。
RSLの倉庫拠点
RSLの倉庫は2023年3月時点で、以下の6拠点(RFC八尾は2023年稼働予定)あります。
所在地 | 倉庫 |
---|---|
千葉県 | RFC流山 RFC習志野 |
神奈川県 | RFC中央林間 |
大阪府 | RFC枚方 RFC八尾(2023年稼働開始予定) |
福岡県 | RFC福岡 |
RSLの納品先はこれらの拠点のいずれかですが、納品先は倉庫の在庫状況によって楽天市場から指示があり、ショップ側では選択できません。
AmazonFBA倉庫については、以下の記事をご参照ください。
楽天ロジスティクス利用で効率よく収益アップを実現させよう!
RSL利用で業務を効率化できれば、大事な業務に注力できます。
コストはかかりますが、配送料の安さや人件費を考えれば、利用したほうが節約になる可能性もあります。
効率化やコスト削減の一案として、検討してみてはいかがでしょうか。