ECサイトの運営に、アクセス数や売上の確認といった作業は欠かせません。
データを見るだけでなく、さらにそこから分析しなければ売上には繋がらないのです。
しかし、自分で分析すると、以下のような不安・疑問がわいてくるでしょう。
「そもそもサイト分析の意味は?」
「本当にこれであっているのか」
「もう少し分析が楽になるツールはないか」
そこで本記事では、ECサイトの基本情報から分析で見るべきポイント、分析方法を解説します。
くわえて、ECサイトの分析がより便利になるツールも紹介します。
ECサイト分析の必要性
ECサイトを正しく分析するためには、そもそもなぜサイト分析を行う必要があるのかを理解しておきましょう。
ECサイトに分析が必要な理由を、次の3つのメリットからくわしく解説します。
- 今の課題が見つかる
- 顧客の行動が把握できる
- 改善できれば売上アップに繋がる
なぜ分析を行う必要があるのか、疑問を抱えている人は参考にしてください。
今の課題が見つかる
ECサイトで売上やアクセス数などを改善するには、膨大な項目があげられます。
例えば、サイトデザイン・リンク設置箇所・構造・おすすめ商品の表示位置などといった項目です。
これらから漠然と感覚的に修正する箇所を探していては、売上アップに繋がるとは言い切れません。
そこで、正しいECサイト分析を行うと、現状の課題が明確に把握できるといったメリットがあります。
どの項目の何の要素が改善すべきかを特定でき、その箇所を改善するだけですから、作業時間も大幅に軽減されるのです。
顧客の行動が把握できる
ECサイトを分析できるツールを活用すると、自分のサイト内で顧客がどのような行動をとったかが把握できます。
行動履歴が把握できると「メイン商品の掲載位置を変更する」「顧客がほとんど毎回みている場所にセール情報を掲載する」といった行動が可能となるのです。
顧客行動を理解することを可能にするのが分析で、売上向上・目標達成のための近道となります。
特にECサイトは通常のWebサイトよりもページ数が多いです。
そのため、収集できる顧客の行動履歴も多く入手できるでしょう。
改善できれば売上アップに繋がる
ECサイト分析は数値に基づいた分析のため、ECサイトの現状が把握できることから、明確な改善計画を立てられます。
ECサイトの現状とは、アクセス数や利用者数以外に、どの商品が売れているのか、売れていないのかなどのことです。
具体的な数値が土台になっているため、再現性が高く、ECサイトを早急に改善できます。
ECサイトの売上を伸ばし、運営を安定させるためにも、分析は欠かせません。
ECサイト分析で見るべきポイント・項目
実際にECサイト分析を行う前に、見るべきポイントや項目をみていきましょう。
前述したように、分析するポイント・項目の数は多く存在しています。
そのなかでも特に重要な項目を以下の8つ紹介します。
- 売上
- 利益
- アクセス数
- 流入経路
- CVR(購入率)
- 直帰率
- 離脱率
- 客単価
何を数値化して改善していけば良いか分からないといった状態の人は、ぜひ参考にしてください。
売上
初心者でも把握しやすい項目の一つが、売上です。
売上が低ければ、ECサイト運営のモチベーションも下がり、新しい記事を更新する頻度も下がってしまいます。
1日や1顧客あたりの購入価格を把握するのも良いですが、長期的に安定して運営を行っていきたいなら「売上高」にも着目すると良いでしょう。
売上高は、次のような計算式で算出されます。
売上高=アクセス数×CVR(購入率)×客単価
上記の方法で算出することで、客単価は高いのに売上が伸びないという場合、他のアクセス数やCVRが少なくて足を引っ張っていることが分かります。
ただ売上が低いというだけでは、なぜ売上が伸びないのかは分かりません。
難しい計算ではないため、原因が何なのかをしっかり分解して考えていきましょう。
利益
利益は、売上から経費を差し引いた金額です。
ECサイトの運営費用だけでなく、仕入れ費用や外注しているなら人件費も該当します。
ECサイト運営を始めた人は、そもそも収益が欲しいからという人がほとんどでしょう。
運営当初は赤字でも徐々に利益が出始めていれば良いですが、売上があるのに経費がかかりすぎて利益が出ない、という事態になっているのであれば問題です。
何が経費になっているのか、詳細を把握しておきましょう。
また、売上高に対して利益が何割占めているかを把握するために、以下の方法で「利益率」を出すのもおすすめです。
利益率=利益÷売上×100
一般的に、ECサイト運営で目安となっている利益率は20%程度とされています。
自分のサイトの運営状況が良好かどうかを判断するために、定期的に計算しておきましょう。
アクセス数
ECサイトにどれだけの人が訪問したのかを示す項目が、アクセス数です。
売上高の計算でも必要になる項目の一つで、アクセス数が無い限り売上は1円も上がりません。
アクセス数は、指定の期間内にページが何回表示されたかを数える「PV数」や、訪問数を数える「セッション数」など、複数の項目に分けられます。
アクセス数を増やすには、SEOを最適化して検索された時に上位に表示されるように対策が可能です。
また、InstagramやTikTokなどのSNSを活用して露出を増やしたりなど、さまざまな方法があります。
流入経路
顧客がECサイトを訪問するまでの、流入経路の把握も大切です。
GoogleやYahoo!などの検索エンジンからECサイトに訪問したのか、SNSや広告からたどり着いたのか、顧客の行動を把握しておきましょう。
これは、もし検索エンジンからの流入が少ないならSEO対策を強化でき、SNSからが少なければサイトの露出を増やすといった対策が打てるためです。
流入経路の把握はアクセス数に直結するので、適切な対策を打っていきましょう。
CVR(購入率)
CVRとは、Conversion Rateを略したものです。
ある期間内にECサイトを訪問した人のうち、購入した人がどのくらいの割合かを示す項目です。
転換率や購入率ともいわれ、ほとんどのECサイト運営者が重要視しています。
CVRの計算方法は以下のとおりです。
CVR=購入者数÷セッション数(訪問者数)×100
アクセス数が多いがCVRは低いといった場合、顧客の求めている商品がなかったり、サイト構造が複雑で目的商品を見つけられなかったりというケースが考えられます。
人気商品をトップに配置する、商品購入ボタンのサイズを大きくするなど、購入意欲をかきたてる工夫が必要です。
直帰率
運営しているECサイトの1ページ目だけを見て、すぐにサイトから離脱する人の割合を直帰率と言います。
サイトに流入してきても購入には至らず、すぐにサイトから離れてしまった人とも考えられるため、サイト内を巡回する時間を長くする工夫が必須です。
直帰率は次の公式で求められます。
直帰率=直帰数÷セッション数(訪問者数)×100
直帰率を改善するには、初見でも使いやすいようなサイトデザインに変えたり、ファーストビューを気にかけるなどを実践しましょう。
離脱率
直帰率と混同する人もいますが、離脱率とは、ECサイト内に顧客がどれだけ滞在したかを示す割合です。
ECサイトが顧客に興味関心を抱かせているなら、ページ内にあるリンクで次のページに遷移し、2ページ3ページと進みます。
離脱率を出す方法は次のとおりです。
離脱率=ECサイト全体の訪問数(離脱数)÷ECサイト全体のPV数×100
特定のページの離脱数を算出したいときは以下の方法で計算できます。
ページAの離脱率=ページAの訪問数÷ページAのPV数×100
離脱率が高いと、購買意欲が低いということになり、収益にも繋がりづらいです。
離脱率を少しでも軽減するために、魅力のあるECサイトを作成していきましょう。
客単価
客単価は、1人の顧客が1会計でいくらの金額を使うかを平均化した数値です。
これまでの項目と同様に、ECサイトの売上に直接的に影響します。
客単価は次の計算方法で求められます。
客単価=売上高÷購入人数
これまでと同じ集客数でも、客単価が高くなると比例して売上・利益が向上します。
客単価を上げるには、まとめ買いできるようにおすすめ商品を表示させたり、一定の金額以上になれば割引にしたりといった工夫をしていきましょう。
ECサイトの分析手法
ECサイトの分析手法について、次の4ステップに分けて解説します。
- STEP①ECのデータを分析する
- STEP②データを基に課題を抽出する
- STEP③課題を解決する施策立案・実行
- STEP④施策の効果検証
より良いECサイトを作り上げ、安定して収益を得たいと考えている人は参考にしてください。
STEP①ECのデータを分析する
まずは前述した8つの項目の数値を調べます。
データを出すことで、どの項目の数値が低いかが明確に分かり、今後どのような施策を行えば良いかの道標が見つかるためです。
ECサイトの現状を正しく把握することで、分析のスタート地点に立ったといえるでしょう。
この時に分析ツールを活用すると、わざわざ手計算でデータを出す必要がないため時間短縮に繋がります。
手計算にかけていた時間をツールに任せ、空いた時間で他の作業が行えるため、業務の効率化が図れます。
STEP②データを元に課題を抽出する
分析が完了したら、そのデータを基に何が売上向上の妨げになっているか、課題を抽出していきましょう。
項目によって必要となるデータは異なるため、何を目的とするかをはっきりとさせる必要があります。
例えば、売上以前にアクセス数が著しく少ない、アクセス数はあるものの離脱率が高いなどがあげられます。
課題を明確化することが重要です。
ここで課題が漠然としたものになると、次のステップで支障が出るため、できるだけ詳しく抽出してください。
STEP③課題を解決する施策立案・実行
これまでのステップで得られたデータ分析や課題から、再現性の高い施策を立案しましょう。
PCよりもスマートフォンからのアクセスが多いなら、スマートフォン向けのサイトデザインに変更すると施策立案ができます。
また、客単価が低いなら決済前におすすめ商品を表示させるなど、多くの方法が考えられるでしょう。
施策立案が完了したら、あとは実行あるのみです。
売上を伸ばすためにも、一つ一つ着実にアクションを取り、課題を解消していきましょう。
STEP④施策の効果検証
施策の実行後、すぐに結果が得られるわけではありません。
週や月単位で期間を設け、その後の結果がどうなったかを検証してください。
結果検証を行わないと、施策を実行したという満足感だけ得ることになってしまい、課題解消に繋がったかどうかが分からないままになってしまいます。
もし課題解消に至らなかった場合は、実行した施策が正しくなかった可能性が高いです。
再度分析・課題抽出・施策を実行するというステップを、効果が出るまで繰り返しましょう。
ECサイトの分析に便利なツール
分析ツールは無料で利用できるものから有料のものまで多岐に渡るため、全てを試して自分に合うかを確かめるには膨大な時間がかかるでしょう。
そこで、本記事ではECサイトの分析に使いやすいツールを以下の5つ紹介します。
- Googleアナリティクス
- Googleサーチコンソール
- ヒートマップ
- カゴ落ち対策ツール
- 競合サイト分析ツール
これからツールの導入を検討している、もっと自分に合うツールを使いたいと感じている人は、参考にしてください。
Googleアナリティクス
ECサイトの分析ツールで代表的なものの一つが「Googleアナリティクス」です。
一度は使ったことがある、使用を検討したことがあると回答する人も多いでしょう。
Googleアナリティクスは、Googleが提供している、無料で使用できるツールです。
セッション数やCVRだけでなく、商品が購入されるまでの顧客の行動を可視化できます。
流入経路ごとのCVRも容易に数値化できるため、購入までのどの過程に課題があるかを明確に把握できます。
Googleサーチコンソール
「Googleサーチコンソール」は、検索エンジンでキーワードを入力・検索してECサイトに訪問した場合の、検索時に使われたキーワードを確認できます。
また、SEO対策でGoogleでの検索結果に、何位で表示されているかも可視化できるツールです。
SEO対策だけでなく、HTMLの改善やクロームエラーの確認などで活用もできるため、Googleアナリティクス同様に使用者が多いでしょう。
ヒートマップ
ヒートマップとは、あるページで顧客の関心が集中している部分はどこなのかを色で判別し、わかりやすく表現できるツールです。
ページ内で顧客がどのようにマウスを動かしたか、どの箇所をクリックしたのかといった、顧客の行動履歴を可視化できます。
Microsoft社が提供しているサービスの「ヒートマップ」は、ほとんどリアルタイムで顧客の行動分析ができます。
無料ながらも高性能なツールなため、一度利用してみるのも良いでしょう。
カゴ落ち対策ツール
カゴ落ちとは、カートに商品があるものの、顧客が購入前にECサイトを離脱してしまう現象です。
カゴ落ち対策ツールを活用すると、カートに商品が残ったままである旨を顧客に伝えたり、メールの開封時刻やリンクのクリック率なども把握できます。
おすすめのカゴ落ち対策ツールは、ユミルリンクが提供している「Cuenote FC」です。
自動的にカゴ落ちした顧客にリマインドメールを送信し、カゴ落ち状況がグラフで可視化されます。
リマインドメールの配信効果も確認できるため、売上に悩んでいる人におすすめです。
競合サイト分析ツール
検索エンジンからの流入が多い場合、競合サイト分析ツールも活用すると良いでしょう。
検索エンジンで上位を表示するには、競合サイトよりも総合的に上回る必要があります。
競合サイトとの優劣を把握することで、競合サイトの戦略を参考にでき、最終的にはSEO対策にも繋がります。
競合サイト分析ツールでのおすすめは「Cyro-n(ジャイロン) SEO」です。
キーワードを登録しておくだけで、キーワードの検索順位を毎日自動でチェックしてくれます。
また、競合サイトの検索順位や、競合サイトのページ分析なども可能です。
まとめ:ECサイトはデータ分析が成功の秘訣
ECサイトで売上・利益を伸ばして成功するには、適切なデータ分析が必須です。
分析をするだけで、顧客の行動や心理が理解でき、それに合わせてECサイトの課題抽出・施策の実行が行えます。
しかしECサイト分析は、一つひとつを計算していては膨大な時間を要してしまうため、それぞれの分析データに見合うツールを活用するのがおすすめです。
どの分析ツールにするか悩んでいる人は、本記事で紹介した5つのツールを使用してみてください。