企業が個人向けに発信するBtoC-EC市場と同様に、企業間の電子商取引「BtoB-EC」も、その市場規模は右肩上がりの拡大傾向にあります。
このページでは、日本国内のBtoC-EC市場がどのように発展してきているか、その背景となる社会情勢や今後の動向なども含め、紹介します。
今後のBtoB-EC市場への新規参入や、規模拡大を検討する際の参考にしてください。
BtoB-ECの市場規模
BtoB-ECの市場規模がどのように変動しているのか、経済産業省による調査資料を参考に2022年9月時点における直近8年間のデータをまとめてみました。
年度 | BtoB-ECの市場規模 |
---|---|
2014年 | 277.9兆円 |
2015年 | 287.2兆円 |
2016年 | 290.9兆円 |
2017年 | 318.1兆円 |
2018年 | 344.2兆円 |
2019年 | 353.0兆円 |
2020年 | 334.9兆円 |
2021年 | 372.7兆円 |
この過去8年間のBtoB-ECの市場規模の推移をグラフにすると、2020年新型コロナウィルス感染拡大の影響により伸び率がマイナスになっているのを除き、右肩上がりで推移しています。
続いて、BtoB-EC市場の業種別における市場規模の変化も見てみましょう。
BtoB-EC業種 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
---|---|---|---|---|---|
製造:食品 | 229,760 | 244,040 | 266,010 | 264,672 | 271,027 |
卸売 | 940,440 | 1,039,510 | 1,026,450 | 920,944 | 1,006,059 |
運輸 | 93,130 | 97,550 | 104,610 | 96,843 | 110,884 |
広告・物品賃貸 | 36,490 | 38,210 | 42,110 | 38,206 | 43,568 |
小売 | 14,910 | 17,860 | 19,890 | 25,983 | 29,875 |
情報通信 | 126,920 | 133,990 | 145,820 | 151,685 | 166,975 |
建設 | 150,770 | 166,510 | 182,680 | 195,944 | 208,558 |
2020年新型コロナウィルス感染症拡大により、一部業種の市場規模が縮小しているのがわかります。こ一部業種の大幅な縮小が、BtoB-EC市場全体の伸び率を前年比マイナスにするほどの影響をもたらしたのです。
特に食品製造業や卸売業、運輸業、広告・物品賃貸業で、2020年の市場規模が縮小しています。
その一方で、巣ごもり需要による影響もあり、小売業、情報通信業、建設業は低迷することなく順調に伸びています。
ですが、翌2021年には前年の大きなマイナス影響を跳ねのけ、2019年を上回る市場規模拡大となったのです。
新型コロナウィルス感染症拡大により企業ニーズが増加し、販売側の企業のEC化もさらに加速した結果ともいえるでしょう。
リモートワークなど、在宅での作業が求められることもある中、従来当たり前に行われてきた紙ベースの取引が、デジタル形式のやりとりに変化しています。
政府による「働き方改革」もあり、ビジネスのデジタル化やIT化は以前から進んできてはいますが、これまで参入していなかった中小企業でも、EC化への流れにのらざるを得ない状況になっているともいえますね。
近年では、低コストでEC化できるプラットフォームも増加しています。BtoB-EC化が中小企業や個人事業主でも以前より容易に実現可能となっていることも、市場規模拡大に貢献している要素の1つといえるでしょう。
BtoB市場のEC化率
では、BtoB-EC市場での「EC化率」はどのように変化してきているのでしょうか。
BtoB-EC市場のEC化率についても、経済産業省の調査資料を参考に直近過去5年間のデータをまとめました。
BtoB-EC化率 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
---|---|---|---|---|---|
建設 | 10.7% | 11.0% | 12.0% | 13.1% | 14.3% |
製造:食品 | 53.6% | 55.6% | 59.3% | 63.3% | 67.2% |
製造:繊維・日用品・化学 | 39.2% | 40.6% | 40.7% | 45.7% | 47.9% |
製造:鉄・非鉄金属 | 34.6% | 35.8% | 38.1% | 40.5% | 42.7% |
製造:産業関連機器・精密機器 | 31.9% | 33.1% | 35.1% | 38.3% | 40.7% |
製造:電気・情報関連機器 | 52.4% | 53.5% | 57.9% | 61.1% | 64.2% |
製造:輸送用機械 | 61.1% | 63.2% | 67.0% | 70.7% | 74.3% |
情報通信 | 18.3% | 18.8% | 19.9% | 21.0% | 21.8% |
運輸 | 15.7% | 15.9% | 16.8% | 18.2% | 19.2% |
卸売 | 26.9% | 27.7% | 28.8% | 30.6% | 32.3% |
金融 | 20.3% | 20.9% | 22.0% | 22.5% | 23.2% |
サービス | 12.6% | 12.8% | 14.0% | 14.6% | 15.5% |
商品やサービスの「型」や「規格」等が決まっている商品を扱う業種ではEC化もしやすく、順調にEC化率の伸びを示していることがわかります。
とはいえ、EC化率を見てもいまだ50%以下の業種がほとんどで、BtoB-EC市場規模は今後も右肩上がりの伸びが期待できるでしょう。
業種別のEC化率については、以下の記事で詳しく解説しています。
例えばBtoB-EC市場で注目されているECサイトとして、
- モノタロウ
- アスクル
- Amazonビジネス
などが挙げられるでしょう。
モノタロウでは、様々な業種で必要となる工具やパーツ等を取り揃えており、当日出荷や翌日出荷で迅速に必要なものを取り寄せできます。
アスクルやAmazonビジネスでは、事務用品等、オフィスで必要な商品をまとめて一般通販よりも安く購入できるうえ、注文の翌日など迅速に届けてもらえるのが魅力。
これらのECサービス利用により、企業は都度カタログを取り寄せて、注文書を作成、取り寄せまでの時間もかかるなど非効率だった部分を格段に効率化できるわけです。
いずれのサービスもEC化することで企業ニーズに応え、成功しているビジネスモデルですね。
BtoB-EC市場で勝ち進むための戦略を検討する際は、ECサイト構築のプロフェッショナルにご相談いただく選択肢もあります。EC運営代行で数多くの実績をもつサービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか
BtoB-EC市場参入のメリット
BtoB-EC市場に参入するメリットとして挙げられるのは、主に以下の3つのポイントです。
- 業務負担の軽減につながる
- 営業サポートになる
- 地域にこだわらず広くアピールできる
BtoB-EC市場におけるそれぞれのメリットを解説します。
業務負担の軽減につながる
BtoB-ECサイトで受注するようになれば、電話やFAX、メール等で受注していたことにより発生する課題をまとめて改善可能。
電話やFAX、メールでの受注では、以下のようなミスが発生することが考えられます。
- 聞き間違いによるミス
- 言った言わないのトラブル
- 書き間違いや見間違いによるミス
これらのミスは、受注ミスや誤出荷の原因となるリスクにも。
EC化すれば入力は直接顧客が行い、リアルタイムで注文内容の最終確認も可能となり、利便性も高まります。発注側の不安も取り除けるでしょう。
EC化することで受注ミスの発生を最小限に抑えられれば、従業員の手間も軽減でき、企業全体の効率化にもつながるのです。
営業サポートになる
BtoB-ECサイトを構築し、インターネット検索でサイトを閲覧してもらえるようになれば、サイトからの流入も見込めます。
営業マンによる取引先開拓だけに頼っている状況では事業の拡大範囲も限られますが、BtoB-ECサイトを構築していれば、様々な企業の目に触れるチャンスも生まれるわけです。
サイトからの問い合わせが増えれば、効率のよい営業活動にもつながります。
地域にこだわらず広くアピールできる
BtoBビジネスの業種や販売する商品、サービス内容にもよりますが、インターネットで検索してもらえれば、地域も限定せずに対応できるようになります。
日本国内はもちろん、グローバル展開へのチャンスが広がる可能性もあるでしょう。
越境ECなども視野に入れた展開が可能な点も、EC化の大きな魅力です。
以下の記事も合わせて参考にしてください。
BtoB-EC市場参入のデメリット
BtoB-EC市場に参入できれば様々な面で効率化が可能となりますが、デメリットもあります。
BtoB-EC市場参入のデメリットとして挙げられるのは、主に以下の3つのポイントです。
- ECサイト構築や導入に費用がかかる
- ECサイト運営ノウハウの構築が必要
- 既存顧客へのサポート対応が必須
それぞれどのようなデメリットか、詳しく見ていきましょう。
ECサイト構築や導入に費用がかかる
個人向けのBtoC-ECサイトでは、基本的に個人1人1人が自由にアカウントを作成して商品を購入できます。一方BtoB-ECサイトでは、企業ごとにアカウントを作成し、各企業の複数の部署や従業員がカートに商品を入れるような使い方をするケースもあり、各種の購入スタイルに対応できるシステム構築も必要です。
支払い方法についても個人消費者への販売時とは異なり、請求書払い(掛け払い)への対応が必要となります。
ECサイトを構築する技術力が社内に備わっていれば取り組みやすいですが、新たにシステム構築できる人材を確保したり、外部に委託したりする場合にはある程度まとまった費用がかかります。
ECサイト構築では、ただサイトを作ればいいというものではなく、サイトに企業を呼ぶための集客が必要ですし、そのサイトで商品を売るための仕組みづくりも欠かせません。
ECサイト構築後も、データを分析、検証しながら問題点を改善していくことも非常に重要なのです。
ECサイト運営ノウハウ構築
ECサイトを導入すれば、その運営ノウハウを社内で共有していく必要があります。
各部門におけるECサイトの運営ノウハウ構築、マニュアル作成など、新たな課題も出てくるでしょう。
既存顧客へのサポート対応が必須
PC操作に不慣れな企業であれば、それまでの電話やFAXでの注文でないと対応が難しいといったケースもでてくる可能性があります。
EC化にあたっては、一部の既存顧客へのサポート対応が必要となることもあるでしょう。
BtoB-ECサイト運営における課題
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」では、「国内 BtoB-ECにかかるトピック」として、以下の2点が挙げられています。
- IP網化に伴うINSネットの廃止
- 適格請求書等保存方式(インボイス制度)の対応
それぞれわかりやすく解説します。
IP網化に伴うINSネットの廃止
多くの企業で利用されているINSネットの「ディジタル通信モード」が2024年1月にサービス終了となります。
INSネットとは、NTTが1980年代から提供しているデジタル通信サービスの名称です。
INSネットは、様々な企業・業種で活用されており、電子商取引で利用されているケースも多数。
INSネットでのBtoB-ECサイトでは、EDIという電子データ交換を行うシステムでも広く活用されており、INSのディジタル通信モードサービスが終了すれば、この機能も利用できなくなります。つまり、他のシステムへの移行が必要となるのです。
INSネットのディジタル通信モードのサービス終了後も、当面は対応策が取られますが、2027年頃には完全にサービス提供終了となる予定。
INSを利用中か否かの確認方法を含め、詳しくは総務省の資料をご参照ください。
特に現在INSネットを利用中で今後EC化を検討しているのであれば、早めに他サービスへの移行で対処しておくことをおすすめします。
適格請求書等保存方式(インボイス制度)の対応
適格請求書等保存方式(インボイス制度)とは、2023年(令和5年)10月からの導入が予定されている消費税に関する新しい保存方式。
インボイス制度の下では、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である 「インボイス発行事業者」(適格請求書発行事業者)が交付する「インボイス」(適格請求書)等の保存が仕入税 額控除の要件となります。
引用:国税庁資料
このインボイス制度では、インボイス発行事業者(売り手側)に、
- 取引相手からの求めに応じてインボイスを交付する義務
- 交付済みのインボイスの写しを保存する義務
この2つの義務が課せられます。
BtoB-ECにおいては、電磁的記録による電子インボイスの発行が可能。電子インボイス(デジタルインボイス)については、国際規格「Peppol(ペポル)」を日本国内の標準仕様とする方針が決まっており、現在日本仕様のPeppolの整備が進められているところです。
BtoB-ECビジネスでは、これら「INSネット廃止」と「インボイス制度導入」の2つの課題も踏まえつつ、EC化を検討していく必要があります。
BtoB-EC化の波に乗ろう
新型コロナウィルスをきっかけに大きく変わってきた社会的ニーズもあり、年々増加傾向にあるBtoB-EC市場。EC化率は上昇しているものの、まだまだEC事業への参入企業が半数以下にとどまっている業種も多く、これから先の伸びも期待できます。
この市場規模が右肩上がりに拡大している時期に、しっかりと社会情勢の流れにのりたいですね。そのためにも、BtoB-EC事業のメリットやデメリット、課題も踏まえたうえで、EC化やECビジネス拡大を正しい方向性で検討していくことが大事です。
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