楽天市場での出店に限らず、自社商品を転売されることには自社ブランドの信頼性の喪失や、適切な販売環境・流通経路の阻害など、複数のリスクがあります。楽天市場出店にあたっては、転売についてどのように対応すべきか、自社でできる対策はあるのか、気になるところでしょう。
このページでは、楽天市場での転売によるリスクから楽天市場の規約や取り組み、自社でできる回避策まで解説します。楽天市場での転売被害を防ぎ、健全なECショップ運営を維持していきましょう。
楽天市場で転売されることによるリスク
楽天市場で出品している商品を転売されることには、以下のようなリスクがあります。
- 意図しない価格高騰や価格崩壊を招く
- 商品を必要とする消費者に商品を届けられない
- 適切な流通の妨げになる
- 品質を維持できない
- ブランドイメージにダメージを与える
それぞれの内容を見てきましょう。
意図しない価格高騰や価格崩壊を招く
自社商品を転売されがちなケースとしては、商品の在庫が残り少ない場合や、セールで大幅に値引き販売した場合などが挙げられます。
需要に対して商品在庫が少なければ、買い占められて定価より高い価格で販売される可能性がありますし、セールで大幅に値引きした商品を定価より安く販売されることもあるでしょう。
定価より安く販売されれば、正規店での売上にも悪影響を及ぼします。
商品を必要とする消費者に商品を届けられない
商品価格が高騰すれば、本当に必要としているユーザーに正規価格で商品を販売するのが難しくなります。
メーカー側が意図しない価格高騰によって、本来買ってもらうべき消費者が購入を諦めるような事態はなんとしても避けたいですね。
適切な流通の妨げになる
転売業者による買い占めは、適切な商品流通の妨げになります。
新型コロナウィルス感染症が拡大する中、多くの消費者が必要とするマスクを転売業者が買い占め、品薄に拍車をかけ、価格が高騰したのは記憶に新しいところでしょう。
正常な流通ルートを阻害する転売は、このように社会問題にもなり得ます。
品質を維持できない
メーカーが販売する商品は、商品ごとに適切に管理、販売されています。
例えば食品では、温度管理や期限の管理もあるでしょう。
転売によって適切な管理がなされずに商品が出回れば、メーカーが提供するべき品質を維持できなくなります。
一定の品質を担保できなければ、消費者に安全安心な商品を届けるメーカー側の努力も台無しになり、信頼性も失われてしまうのです。
ブランドイメージにダメージを与える
どのルートからの購入であっても、ユーザーにしてみれば1つの商品です。商品の価値やブランドのイメージは、ユーザーが購入したその商品の実際の印象で大きく変わります。
転売により不当な管理で出荷された商品に不具合があった場合でも、商品やブランドが直接ダメージを受けるのです。
例えば転売で入手した商品ということでメーカー保証の対象外となるケースでは、消費者にとってマイナスの体験となり、ブランドイメージを低下させ、信頼性を失う可能性もあるでしょう。
自社商品を転売されることには、このように複数の大きなリスクがあり、楽天市場出店でも、転売による出品や転売目的での購入に目を光らせておく必要があるのです。
ECサイト運営では、商品販売に関する戦略のみならず、こうした転売リスクへの備えも必要です。ECサイト運営は販売や集客だけでも様々な施策が必要であり、なかなかうまく対応しきれないなどお困りになるケースもあるでしょう。
ECサイト運営でのリソース不足等のお悩みは、ECサイト運営代行会社にお気軽にお問い合わせください。ECサイト運営のプロが、サイトの改善点を丁寧に分析し、最適なプランをご提案いたします。
楽天市場では転売OK?
楽天市場では、転売が完全に禁止されているわけではありません。
ただし、楽天市場の規約やガイドラインでは、一部転売に関する禁止商材や禁止行為等の記載があります。また、近年転売が社会問題化していることから、楽天市場としての転売対策も以前よりさらに強化されているといった状況です。
楽天市場出店における禁止商材
楽天市場出店では、「転売禁止」と明確に示されているわけではありませんが、禁止商材や禁止行為の中に転売禁止に該当する規程があります。
ここでは、楽天市場が示す「取扱禁止商材・禁止行為ガイドライン」より、転売に該当する禁止商材をピックアップしてみました。
- 商品に関する契約等で譲渡・転売が禁止されている商材
- 他人の権利・利益を侵害する可能性のある商材
- 楽天市場が不適切と判断した商材
それぞれ詳しく解説します。
商品に関する契約等で譲渡・転売が禁止されているもの
楽天市場では、以下に該当する商品の譲渡転売が禁止されています。
- 預貯金または証券の口座、預貯金通帳、クレジットカード、キャッシュカード、ローンカード
- 航空会社のマイレージ、その他各種ポイントカード、会員証
- 航空券、乗車券、入場券
- サンプル盤、デモ盤として貸与されているCD、DVD、ソフト
- 企業が販促のために頒布しているポスター、パンフレット、看板
- 開通済みの携帯電話、PHS、ポケットベル
- お買いものパンダグッズ等の当社ノベルティ商品
- メーカーが転売禁止を公表している商品(流通経路がメーカー直販のみの商品)であり、小売店等の一般消費者向け販売店から仕入れられたもの
メーカーが転売禁止と公表している商品について、一般消費者向けに販売されているものを仕入れて販売するのは規約違反です。
他人の権利・利益を侵害する可能性のあるもの
楽天市場では、ブランド品の偽物や類似品等、消費者に誤解を与えたり、他人の商標権や著作権を侵害したりする商品の出品を禁止しています。
同時に、偽ブランド品や真正のブランド品であることを証明できない商品も出品を禁止されています。
楽天市場が不適切と判断した商材
楽天市場では、安全性が確認できない食品や医薬品、化粧品等、ユーザーに健康被害を及ぼす可能性のある商品の販売を禁止しています。
例えば小売店で一般消費者として入手した食品を販売する行為、開封済の医薬品や化粧品を販売する行為は禁止です。
楽天市場出店における禁止行為
楽天市場では「取扱禁止商材・禁止行為ガイドライン」の中で、さらに「商品価格設定に関するガイドライン」で禁止行為を定め、以下の商品価格のルールを示しています。
- 通常の市場価格より高額な設定について
- 非売品について
それぞれの内容を見てみましょう。
通常の市場価格より高額な設定について
通常の市場価格より高額に設定するケースについて、以下に該当する販売価格の設定はペナルティ対象となる可能性があります。
- 自然災害や事故に乗じた高額な価格設定
- 入手困難な商品の高額な価格設定
例えば新型コロナウィルス感染症拡大に乗じたマスクや消毒液、体温計等の価格高騰もこれらに該当します。地震や大雪などの非常時も同様です。
また、人気が集中して需要が高まるようなトレンド商品での価格高騰も、ルール違反の1つとして挙げられます。
通常の市場価格より高額で販売する場合、楽天市場が悪質と判断すれば、出店アカウントの停止や契約解除といったペナルティが科せられる場合もあります。
非売品について
楽天市場で非売品を販売する場合は、高額な価格設定について留意する必要がありますが、そのほかにも以下の点に注意が必要です。
- 買い取り販売には古物商免許が必要
- 転売禁止商品の転売
一般に流通している商品を消費者が購入し、その購入した商品を販売する場合、出店者は古物商の免許が必要です。
メーカーやブランドの権利者が「転売禁止」と示している商品を転売することは、楽天市場のガイドラインで禁止されています。
これらに該当する違反行為があった場合は、ガイドライン違反として楽天市場に報告しましょう。
楽天市場の規約・ガイドラインによって、このように転売についてもそれぞれルールが規定されています。自社の商品が転売されている場合には、これらのガイドラインを確認の上、RMSのお問い合わせフォームから、違反レポートを提出しましょう。
楽天市場の転売防止への取り組み
楽天市場では、楽天ユーザーが安心・安全に買い物できるECサイト環境の構築に努めています。
楽天市場出店においては、法律で禁止されている転売や各種法令で定められている販売ルールを遵守するのはもちろんですが、楽天市場側でも転売防止への取り組みを強化しています。
2021年8月より楽天市場が行っているのは、食品メーカーを主とした包括連携協定の締結です。これは消費者の安全性を損なう可能性の高い「食品」を、安心して購入できる環境を構築するための取り組みです。
包括連携協定を締結したメーカー側では流通経路を限定し、楽天市場側ではメーカーからの情報に基づき、適正でない流通を検知・排除していくといった対応をする仕組み。
2023年4月現在、大手食品メーカーを中心に30以上の企業・ブランドが協定締結しており、今後も締結企業は増加していく見込みです。
楽天市場での転売の違法性
ここまで、楽天市場のガイドラインや転売防止に対する取り組みについて見てきましたが、法律的にはどうなのかも気になるところでしょう。
結論からいえば、法律で禁止されているのは一部の転売であり、ほとんどの転売は禁止されていません。
違法性でいえば、以下の事例が挙げられます。
- チケットの転売
- 古物商の免許を取得せずに中古品の売買を業として行う
チケットの転売は違法
チケット転売については、チケットの流通が適正に行われることを目的として、令和元年に「チケット不正転売禁止法」が施行されています。実際にチケット転売による逮捕者も出ました。
チケット不正転売禁止法に違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金またはその両方が科せられます。
古物商許可なしでの中古品販売業は違法
中古品を購入して転売を営業として行うにあたっては、「古物営業法」により、警視庁への古物商許可申請が必要です。
古物商の許可なく中古品の販売営業を行えば、懲役3年以下または100万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
楽天市場出店において自社でできる転売対策
転売業者が狙いやすい、転売しやすい商品というのはあるものです。
例えば半額セールで点数制限なしに購入できれば、大量に購入してセール終了後に通常価格より安く、大量に販売可能となります。人気商品であれば、多くの転売業者が群がる可能性もあるでしょう。
楽天市場出店で自社の商品が転売業者のターゲットとならないように、事前にできる以下のような対策を講じておくことも重要です。
- 転売禁止の呼びかけ
- 安定した供給
- 購入数の限定
- 転売が疑われる購入者への販売停止
- フリマアプリ等での転売出品への対処
それぞれ詳しく解説します。
転売禁止の呼びかけ
楽天市場では、ショップページで転売目的の購入禁止を表明し、転売と見受けられる注文はキャンセルする場合があるといったアナウンスをしている出店者も少なくありません。
加えて、転売業者から商品を購入するユーザーに向け、商品の品質やトラブルに対応できない旨、注意喚起している出店者も多く見られます。
事前に転売することのリスク、他サイトから購入することのリスクを発信しておくことで、転売による被害をいくらかでも回避できます。
安定した供給
商品在庫が不足するなど、需要に対する供給バランスが崩れると転売業者が買い占め、高額転売されるケースが見られます。
安定した在庫数で供給不足を発生させないことも大事ですが、在庫が不足した場合に再入荷の見込み時期などを明確に示しておくことも、転売防止に役立つでしょう。
購入数の限定
転売業者対策として有効な対策として、購入できる商品数を限定する方法があります。
例えば1人1点しか買えない商品を仕入れても効率が悪いので、転売業者が群がるような事態は避けられます。
転売が疑われる購入者への販売停止
大量にまとめ買いしたり、何度も繰り返し購入したり、転売が疑われる購入者に対しては、注文キャンセルや販売を停止する方法があります。
転売禁止の呼びかけとともに転売が疑われる場合は注文をキャンセルするなどの対抗措置も示しておき、不正転売に対処しましょう。
フリマアプリ等での転売出品への対処
転売を禁止しているのにも関わらず、通販サイトやフリマアプリで自社商品を繰り返し転売しているユーザーがいる場合は、当該プラットフォームの管理者に出品の削除を依頼する方法があります。
ただし、プラットフォームによっては転売を容認している場合もあります。その場合は手間ですが、直接出品者に出品の取り下げ依頼をするしかありません。
楽天市場での転売を回避して健全な運営を
近年ではインターネットだけで簡単に商品を販売できるプラットフォームが多数あり、個人でも転売をしやすい環境が整っています。
そうした中で転売を完全に防止するのは困難ですが、転売業者が目をつけるような商品とならないように予防策を講じ、健全で安全な流通を守っていきましょう。